
「自社にぴったりのシステムを作りたい!」そう意気込んでスクラッチ開発を選んだものの、いざ始めようとすると何から手をつければいいか分からず頭を抱えていませんか?
既存のパッケージ製品とは違って、ゼロから作り上げるスクラッチ開発は自由自在なカスタマイズができる点が最大の魅力ですが、その分だけプロジェクト管理の難易度も高くなりがちです。実際、「思った通りのものが完成しなかった」「追加費用がかさんで予算オーバーした」なんて失敗談も少なくありません。
でも、恐れることはありません。実は、スムーズに進むプロジェクトには、必ずと言っていいほど共通する進め方があるんです。
この記事では、数多くの開発現場を見てきた経験をもとに、システム開発プロジェクトを成功に導くための黄金ルールを徹底解説します。開発会社への上手な依頼の仕方から、専門用語を使わずにエンジニアと意思疎通するコツ、そしてリリース後の運用まで、教科書には載っていない現場直結のリアルなノウハウばかりを集めました。
せっかくのシステム投資を絶対に無駄にしないために。開発パートナーと二人三脚で最高の結果を出すための秘訣を、さっそくチェックしていきましょう。
1. 最初がマジで肝心!「なんとなく」でスタートすると後で地獄を見る理由
システム開発において、スクラッチ開発は自社の業務フローに完全にフィットしたシステムを構築できる唯一無二の手法です。パッケージソフトやSaaSでは手が届かない細かな要望を実現できる自由度の高さは最大の魅力ですが、その自由さが逆にプロジェクトを破綻させる最大の落とし穴にもなり得ます。多くのプロジェクトが炎上する原因のほとんどは、技術的な問題ではなく、プロジェクト立ち上げ時の「曖昧さ」に起因しています。
「とりあえず開発を始めながら詳細を決めよう」「画面を見ないとイメージが湧かないから走り出そう」といった考えでプロジェクトをスタートさせるのは極めて危険です。要件定義がふわっとした状態で設計や実装フェーズに進むと、プロジェクト後半で必ずと言っていいほど「思っていた動きと違う」「この機能がないと業務が回らない」といった致命的な手戻りが発生します。
システム開発における修正コストは、工程が進めば進むほど指数関数的に増大します。要件定義段階での修正コストが1だとすれば、リリース直前の修正コストは100倍にも膨れ上がると言われています。これが、現場が疲弊し、予算が超過し、納期が遅れる、いわゆる「デスマーチ」の正体です。
この地獄を回避するために絶対に必要なのが、RFP(提案依頼書)の作成を含めた、徹底的な事前のスコープ定義です。「何を作り、何を作らないのか」「このシステムで解決したい経営課題は何か」を言語化し、発注側とベンダー側で共通認識を持つことが成功への第一歩です。プロジェクト憲章を作成し、ステークホルダー全員の合意を得てからキックオフを行う。この最初のプロセスにどれだけリソースを割けるかが、プロジェクトの勝敗を分けます。初期段階での「なんとなく」を排除し、解像度を極限まで高めてからスタートを切ることが、スクラッチ開発における最初にして最大の黄金ルールなのです。
2. 要件定義はガチでやろう!開発会社に全部丸投げしたら失敗しちゃうワケ
システム開発の現場において、プロジェクトの成否を分ける最大の分岐点は「要件定義」にあります。スクラッチ開発は、パッケージ製品とは異なり、何もない状態から自社に最適なシステムを作り上げる手法です。自由度が高い反面、「何を作るか」が明確になっていなければ、どれだけ優秀なエンジニアを集めてもゴールにはたどり着けません。ここで多くの発注担当者が陥りやすい最大の罠が、開発会社への「丸投げ」です。
なぜ開発会社に要件定義を丸投げすると失敗するのでしょうか。その理由は単純明快です。開発パートナーはシステム構築のプロフェッショナルですが、あなたの会社の「業務」や「課題」のプロではないからです。現場の細かな業務フロー、独自の商習慣、解決すべき経営課題の優先順位など、社内の人間にしか分からない暗黙知は山ほど存在します。「いい感じに使いやすくしてください」や「現状の業務に合わせてください」といった曖昧なオーダーは、双方の認識に致命的なズレを生じさせます。結果として、テスト段階になって「思っていた機能と違う」「現場で使い物にならない」という事態に陥り、膨大な改修コストと納期の遅延を招くことになるのです。
要件定義を「ガチでやる」とは、発注側が主体性を持ってプロジェクトをリードすることを意味します。まずは社内のステークホルダーを巻き込み、現場担当者の要望をヒアリングし、経営層の意図とすり合わせを行いましょう。そして、「システムで実現すること」と「運用でカバーすること」を明確に切り分ける必要があります。RFP(提案依頼書)の作成段階から詳細な要件を詰め、開発会社とは「依頼する側とされる側」ではなく、共通のゴールを目指すパートナーとして対等に議論を交わす姿勢が不可欠です。
スクラッチ開発のメリットを最大化するためには、初期段階での汗を惜しんではいけません。要件定義書に書かれていない機能は、システムには実装されないと心得てください。発注側の熱量と解像度の高さこそが、使い勝手の良い高品質なシステムを生み出す源泉となります。
3. エンジニアとうまくやるコツって?専門用語がわからなくても大丈夫な伝え方
スクラッチ開発の現場において、発注担当者やプロジェクトマネージャーが最も頭を抱えるのが、エンジニアとのコミュニケーションギャップです。「伝えたはずの仕様と違う」「修正をお願いしたら技術的に無理と言われた」といったトラブルは、実は専門用語を知らないことが原因ではありません。エンジニアとうまく連携するために最も重要なのは、技術的な「How(どう作るか)」を指示することではなく、ビジネスとしての「Why(なぜそれが必要か)」と「What(何を実現したいか)」を正確に共有することです。
例えば、「データベースの構造をこうしてほしい」と無理に専門用語を使って指示する必要はありません。それよりも、「将来的に商品カテゴリーが増えた際、管理画面から誰でも簡単に一括更新できるようにしたい」という業務上の目的を伝えてください。そうすれば、エンジニアはその要件を満たすための最適な技術選定や設計を提案してくれます。
具体的な伝え方のテクニックとして、以下の3つのポイントを意識するとプロジェクトが円滑に進みます。
1. 視覚的な情報を共通言語にする**
言葉だけの説明は誤解の元です。PowerPointやFigmaできれいな資料を作る時間がなければ、手書きのメモやホワイトボードの写真でも構いません。また、「Amazonのこの部分のような動き」といったように、実在するWebサイトやアプリを例に出すのも非常に有効です。Gyazoのようなスクリーンショット共有ツールを活用し、具体的な箇所を指し示しながら要望を伝えることで、認識のズレを大幅に減らすことができます。
2. 「機能」ではなく「ユーザーのストーリー」で話す**
「検索機能を強化してください」という依頼だけでは不十分です。「ユーザーが商品名の一部しか覚えていない場合でも、入力中に候補が表示されてスムーズに商品にたどり着けるようにしたい」と伝えてみましょう。これにより、エンジニアは「サジェスト機能」や「Elasticsearchの導入」など、具体的な解決策をイメージしやすくなります。
3. プロフェッショナルとしての敬意を持つ**
エンジニアは単なる作業者ではなく、技術の専門家です。「これくらい簡単ですぐできますよね?」と決めつけるのは避けましょう。画面上の見た目がシンプルでも、裏側の処理は複雑な場合が多々あります。「こういうことを実現したいのですが、技術的に良い方法はありますか?」と相談ベースで話を持ちかけることで、彼らのモチベーションを高め、より良い提案を引き出すことができます。
専門知識がないことを引け目に感じる必要はありません。ビジネスのゴールを明確に示し、エンジニアをパートナーとして信頼することが、スクラッチ開発を成功に導く黄金ルールです。
4. 「仕様変更したい!」その時どうする?スケジュール遅延を防ぐリアルな対処法
スクラッチ開発の現場において、プロジェクトマネージャーや開発リーダーを最も悩ませるのが、開発途中での「仕様変更」です。要件定義が完了し、実装が進んでいる段階で「やっぱりこの機能も欲しい」「画面のレイアウトを少し変えたい」といった要望が出ることは、避けては通れない宿命と言えるでしょう。しかし、顧客の要望だからといって全てを無条件に受け入れていては、プロジェクトは確実に遅延し、いわゆるデスマーチへと突入します。反対に、頑なに拒否し続ければ、リリース後に「使いにくい」と評価されるリスクがあります。
スケジュールを守りながら、柔軟に対応するための最も重要なルールは「変更管理プロセス」の厳格化です。まず、口頭やチャットツールでの気軽な変更依頼は一切受け付けないというルールを、キックオフの段階で合意しておきましょう。変更要望が発生した場合は、必ずBacklogやJiraなどのプロジェクト管理ツール、あるいは所定の「変更要求書」を通じて正式に起票してもらいます。これにより、「言った言わない」のトラブルを防ぐだけでなく、変更内容を一度ドキュメント化することで、発注者側にも「本当に今必要な変更なのか」を再考させる冷却期間を作ることができます。
次に、トレードオフの可視化を徹底してください。発注者であるクライアントは、画面上のボタンを一つ追加することが、裏側のデータベース構造やAPI連携、そしてテスト工程にどれほどの影響を与えるかを直感的には理解できません。エンジニアは専門用語を使わずに、「この機能を追加するためには、追加で3人日の工数が必要です。そのためには、納期を3日延ばすか、あるいは現在予定している機能Bを次期フェーズに回す必要があります」というように、QCD(品質・コスト・納期)のトレードオフを具体的に提示しましょう。ビジネスジャッジを仰ぐ形にすることで、感情論ではなく合理的な判断を引き出すことができます。
さらに有効なのが、「フェーズ分け(Phasing)」の提案です。その仕様変更が、システム稼働開始時に必須となる「Must要件」なのか、あると便利な「Want要件」なのかを厳しく見極めます。開発終盤に出てくる要望の多くは、実はWant要件であることが少なくありません。「その機能は素晴らしいアイデアですが、まずは予定通りのリリースを優先させるため、リリース後の保守開発フェーズで対応しましょう」と提案することで、顧客の顔を立てつつ、プロジェクトの進捗を守ることが可能です。
スクラッチ開発の成功は、変更をゼロにすることではなく、変更をコントロール下に置くことにあります。影響範囲の調査、工数の再見積もり、そして代替案の提示というプロセスを冷静に遂行することが、プロジェクトを成功へ導く鍵となります。
5. 結局これに尽きる!リリース後も愛されるシステムにするための極意
システム開発プロジェクトにおいて、多くの現場が陥りがちな最大の誤解は「リリース=ゴール」と捉えてしまうことです。しかし、スクラッチ開発の真価が問われるのは、システムが稼働し始め、現場のユーザーが実際に業務で使い始めてからです。莫大なコストと時間をかけて構築した独自システムが、現場から「使いにくい」「Excelの方が早かった」と敬遠され、数年で陳腐化してしまうケースは後を絶ちません。
リリース後も長く愛され、企業の成長を支え続けるシステムにするための極意は、「システムを完成品として扱わず、ビジネスと共に成長させるパートナーとして育て続けること」に尽きます。
具体的に、成功しているプロジェクトでは以下の3つのサイクルが徹底されています。
1. ユーザーフィードバックの即時反映体制を作る**
パッケージソフトとは異なり、スクラッチ開発の強みは「自社業務への完全な適合」です。リリース直後に現場から上がる不満や要望は、システムの欠陥ではなく「改善の種」です。SlackやMicrosoft Teamsなどのチャットツールを活用し、開発チームと現場ユーザーが直接対話できるチャンネルを設けるなど、意見を吸い上げる仕組みを構築しましょう。「言えば直る」という信頼感が、ユーザーの当事者意識(オーナーシップ)を醸成し、システムへの愛着を生み出します。
2. 継続的なUI/UX改善予算を確保する**
初期開発で予算を使い切り、運用保守費を「サーバー維持費とバグ修正のみ」に限定してしまうのは危険です。業務フローは常に変化します。AmazonやGoogleのようなテックジャイアントが提供するサービスが使いやすいのは、日々膨大なABテストと改善を繰り返しているからです。社内システムであっても、ボタンの配置一つ、画面遷移の秒数一つにこだわり、定期的なUI/UX改善を行うためのリソースを確保してください。
3. マニュアル不要の直感性を目指す**
「愛されるシステム」は、分厚い操作マニュアルを読まなくても使えます。導入教育や研修も重要ですが、それに頼りすぎるシステムは定着しません。画面上に適切なツールチップを表示したり、入力エラーをリアルタイムで優しく指摘したりする工夫が必要です。ユーザーを迷わせない設計こそが、最大のユーザーサポートとなります。
結局のところ、システムは「生き物」です。ビジネス環境の変化に合わせて柔軟に姿を変え、現場の担当者の苦労を取り除くために進化し続けること。この運用思想をプロジェクトメンバー全員が共有できるかどうかが、スクラッチ開発の最終的な成否を分けるのです。